テロメア長の短縮と年齢、肥満、喫煙、がんを含めた全死因による死亡との関連を調べた研究のニュースです。
参考記事
テロメアとがん死亡率:長短どちらが得か?
●テロメアとは
・テロメアは短い塩基配列の繰り返し構造で染色体の末端を保護している。
・体細胞では細胞分裂のたびに短くなっていき、ある長さ以下になると細胞死を引き起こす。
・生殖細胞や幹細胞などではテロメラーゼという酵素によってテロメアの長さが維持される。がん細胞にもこの仕組みがあって、いつまでも増殖を続けることができる。
●先行の研究
・テロメアの短縮は加齢に伴う避けられない過程だが、肥満や喫煙などの生活習慣によってさらに悪化するといわれている。
・いくつかの先行研究ではテロメアの短縮の度合いとがんを含めた高い死亡リスクの関係を指摘しているものもあるが、関係ないという報告もあり一致しない。
この結果が食い違う原因のひとつとして、テロメアの伸長に関与するいくつかの遺伝子(TERC、TERT、OBFC1)の遺伝的変異が挙げられている。
●デンマーク、コペンハーゲン大学病院からの研究報告
・二つのコホート研究(コペンハーゲン市心臓研究とコペンハーゲン一般集団研究)の参加者64,637名を対象に1991-2011年まで追跡調査した。
参加者は、BMI、血圧、コレステロール、喫煙の有無、飲酒、身体活動、社会経済的状態などだけでなく、テロメアの長さとTERC、TERT、OBFC1遺伝子の一塩基変異についても検査された。
・測定した白血球中のテロメア長の短縮は年齢とBMIや喫煙などの因子に関連し、またがんを含めた全死因による死亡とも関連していた。
対照的にテロメア長の短縮に関する遺伝子スコアが高いとがんの死亡率だけは低下した。
これはがん患者のテロメア長が遺伝子変異のためにわずかに短くなることは、がん細胞の生存率を低下させるという有益な変化をもたらし、そのため死亡リスクが低下したと考えられる。
逆に言えば、長いテロメア長は細胞分裂の回数を増やすことができるため、がん細胞の生存に有利に働き、がん死亡率高くなると考えている。
2016年03月10日
この記事へのコメント
コメントを書く