認知症などの多くの神経変性疾患は、細胞内のタンパク質の異常な凝集を特徴とし、その異常タンパク質を除去することが模索されているが、異常タンパク質が直接細胞を殺しているわけではなく、この異常タンパク質の存在によって細胞のストレス反応が継続してしまうことが直接原因ではないか、という研究報告です。
参考記事
Are stressed-out brain cells the root cause of neurodegenerative disease?
Stress response silencing by an E3 ligase mutated in neurodegeneration
●カリフォルニア大学バークレー校による研究報告
○認知症などの多くの神経変性疾患の原因の従来の主要な考え方
・異常なタンパク質の塊が、たとえば細胞内の膜構造に穴を開けることによって、ニューロンを直接殺しているなどと考えられている。
・細胞内のタンパク質の異常な凝集を特徴とし、それらを破壊する治療法。
→しかし、これらの異常なタンパク質を分解して除去する治療法の探索はほとんど成功していない。
〇本研究報告を含む新しい研究の主張
・一部の疾患では凝集体が細胞を直接殺していないことが示唆されている。
・細胞内のタンパク質の異常な凝集体は、タンパク質 SIFI が細胞のストレス反応をオフにするのを妨げ、継続的なストレスにより細胞が死滅している。
→凝集したタンパク質の蓄積が脳細胞を殺しているのではなく、凝集タンパク質によってこれらの細胞のストレス反応がオフされず、ストレス反応が継続してしまうことが原因ではないか?。異常タンパク質を除去しても、ストレス反応が継続してしまっていれば症状が改善しない?
→タンパク質凝集体を除去する必要なくこれらの疾患を治療する戦略を示唆している。
〇ストレス反応に対する薬剤の効果
・Nature誌に 1 月 31 日にオンライン掲載された研究で、研究者らは、ストレス反応を強制的に停止させる薬剤を投与すると、若年性認知症として知られる神経変性疾患の一種を模倣する細胞が救われると報告した。
〇細胞内の異常なタンパク質凝集体とストレス応答について
・脳細胞が困難な状況にうまく対処したら、ストレス反応をオフにする必要があり、細胞はストレス応答をオフにする前に、タンパク質凝集体をクリーンアップする必要がある。
・ストレス反応をオフにしないと、細胞は最終的には死んでしまう。
〇SIFI(silencing factor of the integrated stress response)の役割
・非常に大きなタンパク質複合体で、以下の2つの役割がある。
・細胞内の間違った場所に行き着くタンパク質の異常な蓄積に対処するためにストレス反応がオンになるが、SIFIは@凝集体を除去し、その後、A凝集したタンパク質によって引き起こされるストレス応答をオフにする、という役割がある。
・SIFI の構成要素が変異すると、細胞はタンパク質の塊を蓄積し、活発なストレス反応を経験する。
2024年02月18日
この記事へのコメント
コメントを書く